キリスト教における遺品整理の方法と注意点
仏教や神道は日本人に比較的馴染み深い宗教と言えるでしょう。
しかし近時は信仰も多様になってきており、故人がキリスト教やイスラム教といった宗教の教徒だというケースも決して珍しいものではなくなっています。
とりわけキリスト教は地域に根ざした教会も日本中にあり、平成29年版の文化庁『宗教年鑑』によれば、その信者数は191万4196人に上ります。
では、故人がキリスト教徒だった場合、遺品や宗教関係物の処分はどうすべきなのでしょうか。
ここでは、キリスト教における基本的な考え方や形見分けの方法、教会と遺品整理の関係など、キリスト教徒の遺品整理に絡む問題について解説します。
キリスト教の遺品整理事情
(1)仏教や神道とキリスト教
故人の信仰していた宗教が仏教や神道だった場合、葬儀や遺品整理に関してはお寺や神社に相談することができます。
基本的に宗教物は供養し、お焚き上げなどを行うこととなるでしょう。
たとえば仏教ならお仏壇は閉眼供養を経て焼却処分となりますし、神道なら神棚はお焚き上げをし、御札は神社へ返納するわけです。
ところが、キリスト教では事情や手順が異なります。
葬儀は教会や葬儀所で行われるところ、遺品や宗教物の整理についてはキリスト教の考え方と密接に関連してくるためです。
(2)キリスト教の考え方
キリスト教では、カトリックでもプロテスタントでも「人が死んだら、その肉体は土に還る」と考えます。
そのため、形見という感覚は他の宗教と比べて乏しいとされているのです。
キリスト教圏においては、日本のように遺品を棺の中に入れるというのも一般的ではありません。
ただ、値打ち物の時計や背広などを親から子へ譲り渡すという風習はあるため、これらが思い出を繋ぐ品となっている面はあるでしょう。
(3)キリスト教の遺品整理
仏教や神道の遺品整理に時としてお寺や神社が関わるのに対し、キリスト教での遺品整理は教会が行うわけではありません。
キリスト教式の葬儀社から遺品整理業者を紹介してもらうのが一般的です。
また、キリスト教には相互の助け合い精神が見られます。
そこから、教会での活動などを行っていた方の場合、信者たちがボランティアとして遺品整理を手伝うこともあります。
遺品と宗教物
(1)宗教物とは
これに対して宗教物とは、信心用具ともいい、宗教に関わる物を指します。
仏教なら仏壇や位牌、神道なら神棚や御札、キリスト教なら十字架や聖書などが宗教物に当たります。
遺品と比べ、宗教物の場合はそれぞれの宗教との結びつきがそれだけ密接です。
そのため、故人が遺した宗教物の処分をどのように行うべきかが問題となります。
(2)キリスト教に関する宗教物の処分
仏教や神道では、宗教物の処分は「供養」として行われます。
他方、キリスト教ではゴミとして処分可能です。
なぜなら十字架や聖書などは、それ自体が信仰や礼拝の対象となるアイテムではなく、あくまでそれを介して紙に祈りを捧げる道具、媒介物でしかないためです。
キリスト教においても宗教物への祝福(祝別)を行うことはありますが、それもアイテム自体に聖性が宿るというより、身につける人への祈りに過ぎないものと考えられます。
ゴミとして処分できる以上、自治体のルールに沿った形での処理を行うようにしましょう。
(3)宗教物の処分で気をつけるべきポイント
キリスト教の宗教物の中には、宝石や銀飾のように高価な品物もあります。
そうしたものは、単なるゴミとして捨ててしまうのはもったいないと感じられるかも知れません。
ですが、金銭を対価として宗教物のやり取りをするのは、「聖品売買」に当たり、神への冒瀆に繋がるおそれがあります。
実際、教会も祝別したアイテムの売買を禁じているのです。
あくまでも世俗的な価値と宗教物の価値は別と捉え、きちんと砕くなりして処分をする必要があるという点に気をつけましょう。
キリスト教の形見分け
(1)形見分けの方法と時期
その方法や時期は地域や宗教ごとに異なります。
仏式なら30~49日経過後であり、神式なら50日経過後というのが一般的です。
(2)キリスト教における形見分け
キリスト教では、上述のように形見という感覚は乏しいといわれています。
ただ、形見分けをするにしても、30日経過後に行うのが一般的です。
日本では命日から30日目、召天記念日に行うことが多いでしょう。
それ以外の基本的なマナーに関しては、その他の宗教の場合と特に変わるところはありません。
まとめ
遺品の整理は、いつどのように行うかといった判断を含めて何かと難しいものです。
中でも、宗教に絡む物はとりわけ配慮を要するでしょう。
キリスト教は仏教や神道と比べ、死への考え方や捉え方も異なります。無用のトラブルを避けるためにも、思い込みでの処分は避けるのが無難でしょう。
宗教物の遺品整理や形見分けについてお悩みの場合は、専門の遺品整理業者やお近くの教会などにご相談なさることをおすすめします。