遺品整理は「相続」の問題をクリアしてから始めよう!

  • 遺産の相続

遺品整理と相続の関係

民法の視点からみる遺品整理と相続の問題

人が亡くなると、その人の生前持っていた財産は相続人に引き継がれることになります。相続人は、亡くなられた方の財産を相続するかしない選択を、自分が相続することを知った日から3カ月以内に行うことが可能です。(民法915条)ただし、相続人が相続するか否かの意思表示をする前に遺品を勝手に捨てたり、売ったりするなどの処分行為をすると、遺産をすべて相続する(単純承認する)ものとみなされます。

その結果、後から相続を放棄できなくなってしまうこともあるのです。(民法921条)遺産にはお金や不動産などのプラスの財産だけではなく、借金や未払いの債務も含まれるため、場合によっては相続放棄をした方が良いときもあります。つまり、うかつに遺品整理を行うと遺産相続のトラブルが発生してしまいかねないのです。

賃貸における遺品整理の問題

また、賃貸部屋で借家人が亡くなった場合において、大家さんが遺品整理を行うケースも増えてきています。問題なのは、借家人が孤独死した場合です。故人の親族が遠方に住んでいたり、親族と連絡が取れなかったりする場合には、勝手に遺品整理をすることはできません。

 

以上の問題を解決する方法を、以下で紹介します。

あなたが相続人で、相続放棄をしたい場合の解決法

解決法家庭裁判所への手続き

相続放棄をしたい場合、まずは相続をすることを知った日から3カ月以内に、亡くなった方の住所を管轄する家庭裁判所に対して「相続の放棄の申述」をします。しかし、例えばあなたが遠方に住んでいるなど、すぐには家庭裁判所に申述の手続きができない場合が厄介です。この場合、財産価値のない物、つまりゴミと考えられる物のみの処分と清掃を、ひとまず遺品整理業者にお願いする方法もあるでしょう。清掃をせずに放置しておくと、賃貸物件の場合には大家さんから、その分の原状回復費用を請求されることになる可能性が高いです。

故人宅の清掃

亡くなった方の持ち家であった場合でも、近所から異臭などの苦情を受けるなどのトラブルが生じてしまう可能性もあるため、清掃は速やかに行っておいいた方が良いでしょう。業者にお願いする際には、「電話での通話を録音する」「業者への依頼を書面で行う」「書面をコピーしておく」「見積もりと領収書を控えておく」など、「ゴミの処理と清掃のみをお願いした」ことを証明できる証拠を残すようにしておきましょう。

家財道具は移動させる

ゴミ以外の家財道具などについては、トランクルームを借りて移動させることで、亡くなった方の住んでいた部屋の大家さんとの問題を回避できます。トランクルームを借りる費用については相続人全員話し合って決める必要があるでしょう。トランクルームの費用について相続人間でトラブルに発展しそうな場合は、「相続財産管理人」を選任するよう家庭裁判所へ申し立てを行います。相続財産管理人に、残された家財道具などの処分をお願いすることでトラブルを回避可能です。

なお、ゴミではない家財道具などの遺品の買い取り業者を紹介されても、買い取りをお願いしてはいけません。相続を放棄する以上、遺産を売却することはできないからです。

大家さんが遺品整理を行う場合の解決法

お部屋を貸していた方が亡くなってしまった場合でも、大家さんは勝手に亡くなった方の遺品を片づけることはできません。賃借人が亡くなったとしても賃貸借契約は当然に終了するわけではなく、相続人がいた場合には相続人がその賃貸借契約を引き継ぐからです。相続人は、賃貸借契約書に記載された情報から探すことになりますが、契約書から探し出すことができない場合には弁護士に依頼することをおすすめします。

まずは相続人がいないか確かめる

亡くなった方に相続人がいないかを確かめましょう。もし、相続人が見つかり連絡が取れた場合には、遺品整理をお願いします。

相続人が遠方に住んでいるなどで、すぐには遺品整理ができないという場合には、相続人全員から遺品の処分についての同意をもらい、かつ、相続人全員に文書への署名と捺印をしてもらいましょう。これで、大家さんが遺品を片づけることが可能になります。

 

しかしながら、大家さんが相続人を探し、さらに書面への署名捺印をもらうまでは、遺品の片づけに取り掛かることができません。片づけにかかった期間だけ次の人に貸し出す日が遅れるとともに、貸し出すお部屋が傷んでしまうことになります。この場合、大家さんはお部屋を明け渡してもらえるまでの期間分の賃料と、お部屋の清掃や傷んだ場所の原状回復費用を相続人に対して請求することが可能です。

相続人と連絡がつかない場合

もし、相続人と連絡がつかない場合で、連帯保証人がいた場合、相続人などが支払わなかった場合にのみ、連帯保証人に賃料や原状回復費用を請求することができます。相続人も連帯保証人もいない場合には、「相続財産管理人」を家庭裁判所に選任するよう申し立て、相続財産管理人に遺品の処分をお願いすることが可能です。

ただし、この申し立てには収入印紙などの費用が必要となります。費用の回収を少しでも多く受けたい場合には、やはり相続人を見つけ出し、相続人に対して請求することを優先した方が良いでしょう。